日々の絵本と読みもの

空で生まれた雪の一片一片が、私たちのいる地上へたどり着くまでの物語『ゆき ゆき ゆき』

空で生まれた雪の一片一片が、私たちのいる地上へたどり着くまでの物語

ゆき ゆき ゆき

雪の結晶を見たことがありますか? 空から降ってくる雪は、ひとつひとつ似ているようで、みんな違うきれいな形の結晶なのです。空からひらひら落ちてきて手のひらで受け止めると、瞬く間に溶けてしまう……。そんな雪を詩情豊かに描いた絵本『ゆき ゆき ゆき』をご紹介します。

冬の空、冷たい雲の中で、雪のあかちゃんが生まれました。雪のあかちゃんは、雲の中で少しずつ大きくなって結晶になります。たくさんの結晶は、やがて、ぶつかったり、くっついたりしながら、地上へと舞い降り、どんどん積もっていきます。雪が降る前の曇り空や、ほんのりと明るく見える雪が舞う空、地上に降りてくるにつれて、だんだん大きく、形も複雑になっていく結晶を、アニメーションの世界でもおなじみの作者のたむらしげるさんが、精緻に描きます。


たむらさんは、初めて雪の結晶を見たときのことを、次のように語っています。「雪はまるでお伽の国から落ちてきた小人のペンダントのように思えた。もっとよく見ようと顔を近づけると、暖かい息で魔法のように水になってしまった。見ようと思うと溶けてしまうもどかしさが、いっそう神秘的な雪への憧憬を増幅させた」……。たむらさんが、落ちてくる雪の一片一片を愛おしく感じたことが伝わってくる絵本です。

大きく成長した雪の結晶は肉眼でも確認できます。絵本を手にした子どもたちは、きっと雪の結晶の美しさに気づくことでしょう。雪が降ってきたら、親子で舞い降りる雪にそっと手を差し伸べてみてくださいね。

2017.12.01

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