『絵で読む 子どもと祭り』ができるまで|第2回 塚越の花まつり(埼玉県秩父市)
「たくさんのふしぎ」400号は、絵本作家の西村繁男さんが描く『絵で読む 子どもと祭り』。こちらの連載では、4年間かけて西村さんと全国9ヶ所の祭りを取材した担当編集者が、数千枚のなかから選りすぐった写真とともに、絵本の裏側を紹介します。 第2回は、埼玉県秩父市で行われている「塚越の花まつり」です。
第2回 塚越の花まつり(埼玉県秩父市)
「塚越の花まつり」(埼玉県秩父市)は、参道に花をまきながら、集落の薬師堂にお参りして、お釈迦様の誕生を祝う美しい祭りです。お釈迦さまの誕生日は4月8日とされていますが、こちらでは毎年5月4日にとりおこなわれます。
取材は、2015年4月下旬から5月4日までおこないました。参道にまく花は、4月中頃から、子どもたちと、親たち、集落の人たちが協力して集めます。取材には、花集めから伺いました。
まず驚いたのは、集める花の量の多さ。八重桜を中心に、ボタンやツバキ、ナノハナなど、山盛りの花を集めていました。花の山に手を入れると、ふわふわしているうえに、摘まれてから時間が経った花の発酵がはじまっているのか、内側はほんのりとあたたかくなっていました。この花の布団で寝たら、さぞかし心地よいことでしょう。
花集めと同時に、そのほかいろいろな準備がおこなわれます。そのひとつがお参りのときに、お釈迦様の像にかける甘茶づくりです。集落に生えているアマチャの葉を煎ってつくります。写真はそのときの様子。絵本では6ページの左はしに書かれているのがそれです。さて、甘茶のお味は~、とお伝えしたいところですが、甘茶の味を失念してしまいました。メモもとらず……愚か者です……そのくせに、甘茶をつくったあと、七輪に残った火でつくった焼き芋のことはしっかり取材してありました。取材メモにはっきりと、「甘茶のあとの焼きイモ美味」。
前日の夜には、お釈迦様の像を安置する花御堂を飾りつけます。飾りつけに使う花や実、芽は毎年同じですが、カラーリングは飾りつける子どもの感覚で毎年かわるそうです。夜には、男の子2人だけで神社に泊まって、花御堂をまもります。泊まりこむ神社の建物は古く、あたりは街灯が少なく真っ暗です。ある年には、さみしさからか、家に帰ってきてしまった子もいたとかいないとか。私たちが取材した年の男の子2人は役目をつとめあげていました。
翌朝、花御堂とお釈迦様の像を持って、花をまきながら、山の上にある薬師堂にお参りします。早朝にもかかわらず、参道には、カメラ、カメラ、カメラ。カメラマンでごった返します。薬師堂の広場で、子どもたちがいっせいに花をまくときには、たくさんのカメラがいっせいにシャッターをきります。この絵本は、取材したことを忠実に描くことを目指していますので、絵のなかには、たくさんのカメラマンさんたちがちゃんと描かれています。
2018.06.07
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