日々の絵本と読みもの

色とりどりの春へと向かう、ある山のおはなし 『もう いいかあい? はるですよ』

色とりどりの春へと向かう、ある山のおはなし


『もう いいかあい? はるですよ』(「ちいさなかがくのとも」3月号)

寒い冬もだんだんと終わりに近づいてきて、春が待ち遠しい時期になりましたね。おうちの近くで、春の訪れを予感させるような小さな発見をしているお子さんも、いらっしゃるのではないでしょうか。そんな季節にご紹介するのは、冬から春への移り変わりを優しく描いた絵本『もう いいかあい? はるですよ』です。

舞台となるのは、雪の積もった山。静かに眠っていた山は、ふくらんだ木の芽の「もう いいかあい?」という声を聞くと、眠そうに「まあだだよお」とこたえます。雪どけ水がが「いそげ、いそげ、 はるが くる」と、谷に向かって流れ始めると、山は「ぽかり」と目を覚まし、「もう いいよお」と返事をしました。フキノトウが顔を出し、ふくらんだウメのつぼみが「ほろり」と開き、「もう いいかあい?」と「もう いいよお」を繰り返しながら、山はどんどん春へと向かっていきます。やさしく降り出した雨をうけて、育っていく木の芽たち。サクラのつぼみが花を開くと、虫や鳥、そして子どもたちもやってきて、山に春が訪れました。


「もう いいかあい?」と「もう いいよお」のかけあいや、「ちっぽり ちっぽり」「ほろり ほろり」といった楽しい擬音がたっぷり入った軽快な文章は、「やまんばのむすめ まゆ」シリーズなどで知られる富安陽子さんによるもの。そして、静かな雪山が色鮮やかな春へと移り変わっていく様子を美しい絵にしたのは、イラストレーターの松成真理子さん。ページをめくるごとに、春を待つ気持ちが高まっていく、心躍る一冊です。

絵本を楽しんだあとは、ぜひ親子で外に出てみてください。「もう いいかあい?」と呼びかける、春の声が聞こえてくるかもしれませんよ。

2018.02.27

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