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【一読三嘆】書店員が選ぶ、あなたに読んでほしい一冊。『どろぼうのどろぼん』

『どろぼうのどろぼん』の物語


それは、偶然だった。紫陽花の小さな花を雨がぬらす季節、雨やどりしようとしていつのまにか入りこんだ庭で、ぼくはどろぼんと出会った。ぼくは刑事で、そのときはちがう事件を調べているところだった。カギを開けようとしていた手を休めて、彼は、ぼくにむかってゆっくり両手をつきだした。どうぞ手錠をかけてください、というように。
取り調べ室でどろぼんは、いままでにした数々のぬすみのことを語り始める。これまで、千回もぬすみをくりかえしたのに、一度も警察に追われたこともなければ、一件も被害届が出ていないのはなぜなのか。どのようにして、どろぼんはそんなどろぼうの天才になったのか。ぜったいにつかまらないはずだったこのどろぼうの天才は、どうしてぼくにつかまったのか。いつしか自白は彼自身の物語となり、ぼくたちは次第にこの不思議などろぼうに惹きつけられていくのだが……。
第64回小学館児童出版文化賞、第48回日本児童文学者協会新人賞をW受賞するなど高い評価を受けた、詩人斉藤倫の鮮烈な長編デビュー作。

「どろぼん」のあたらしい旅 斉藤倫

この本が出て賞をもらったとき「どろぼんがここにつれてきてくれた」と書きました。十年前のことです。作者だけではなく、じっさいに本は読む人をどこかに連れて行ってくれます。
本は扉を開くとはじまって、閉じるとおわる。見知らぬ世界を夢中で旅し、帰ってきて、おもわずふしぎそうにあたりを見回している子どもを、ぼくは見たことがあります。「ここはどこだっけ?」「じぶんはだれだっけ?」というように。そして、この世にこれほどうつくしいことがあるだろうか?ともおもうのです。
本は連れ去り、たちもどしてくれます。きっと、だれかを変え、世界を変える。だけど「そのために読む」のではつまらない。楽しんで、そして、じぶんや、世界が、変わったのにふと気づく。
発売から十年の旅をしてきたどろぼんが、また新しい子どもたちとめぐりあえますように。
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​​​​​​斉藤倫(さいとうりん)
詩人。『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で、第48回児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。おもな作品に『せなか町から、ずっと』『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』『さいごのゆうれい』「私立探検家学園」シリーズ(以上福音館書店)、『レディオワン』(光村図書)、『あしたもオカピ』(偕成社)、『新月の子どもたち』(ブロンズ新社)』絵本『とうだい』(絵 小池アミイゴ/福音館書店)、うきまるとの共作で『はるとあき』(絵 吉田尚令/小学館)、『のせのせ せーの!』(絵 くのまり/ブロンズ新社)『おやすみまくら』(絵 牧野千穂/小学館)などがある。
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私たちがおすすめするわけ

「こんな星の騒ぐ夜はきっといいことがある。かけてもいい。」
詩人である斉藤倫さんのなめらかでやさしい文章と、そこに散りばめられた、現代美術家の牡丹靖佳さんの描く淡く美しい挿絵。
子どもの本の中には、大人がはっとさせられるものが、時どきまぎれているのだ。
持ち主から忘れられていたものたちを助けていた「もの」の声が聞こえる天才どろぼうどろぼんが、はじめて「もの以外」のもののために歩き出す。
(リブロ光が丘店 山井洋子さん)


「本当の自分の価値」が何かなんてよくわからない。だから、誰かに認められたり大切にされれば幸せ。そんな想いが「生きにくさ」のおおもとになっているのかもしれないとわかりつつ、それを完全に脱ぎ捨てることも難しい。どろぼんの耳に届く声を持たないものの声を聞いていると、そんな自分が立ち現れてきて、悲しみの淵に落ちてしまいそうになるけれど、物語を紡ぐ言葉の数々が、いつもその寸前でわたしを抱きとめてくれる。そして、どろぼんのことをもっと知りたい、わかりたいと思う登場人物たちと同じ気持ちでページをめくっていると、そんな「生きにくさ」が軽くなっていく。
(代官山 蔦屋書店 瀬野尾真紀さん)


児童書担当三年目。ある本に出会った。装丁とタイトルの不思議さに惹かれて買って読んでみた。文章のリズムの心地よさに酔いしれ、なんだ! なんなんだこの本は!!と読みすすめる。玉ねぎの薄皮を徐々に 剝がすように物語の全貌が少しずつ見えてくる。読了。放心。真っ白だ。とんでもない本に出会ってしまったと思った。
私はひねくれにひねくれた、こんがらがった人間で。「いい話」的なものが苦手で。なのにこの物語を素直に「美しいな」と思った。自分で自分にビックリした。あまつさえ「美しくて何が悪い」とまで思った。この物語からこっちそう思うようになった。
現実は悲しいかな、目を覆い耳を塞ぎたくなることが溢れてる。でも、だからこそこの物語の美しさを信じたくなる、こんな現実を良い方に変えていきたいと思う。
この本に出会ってそう信じられる人間が増えたら……。そんな願いを込めつつ。でもただひたすらに読書の楽しさを味わってもらいたくて大きな声で叫びます。「読んでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
(紀伊国屋書店横浜店 花田優子さん)

「一読三嘆」とは?


「一読三嘆」とは、一度読んで何度も感動するという意味。書店の垣根を超えて、そのジャンルに最も詳しい選書の達人が集結。読者に心からおススメしたい作品を選びました。

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