林明子デビュー50周年記念
「絵本づくりの思い出」
今年、絵本作家デビュー50周年を迎えられた林明子さん。お話の絵を描くときには必ず、姪御さんや甥御さんなど、親しい子どもたちをモデルに描いていらっしゃいます。また、主人公の家の中の小物なども、実際に身の周りにあるものや思い入れのあるものを描かれているそうです。林さんの作品には、どれも人のぬくもりや生活の匂いを感じるのは、そんなところに所以があるのかもしれませんね。
「一冊を開くと、その時に出会った優しい人々、こどもたち、風景までが蘇って来ます」と語る、林さん。たくさんある作品の中から年齢別に数点ずつ、制作当時の思い出やエピソードをうかがいました。
0才から
「くつくつあるけのほん」の4冊は、あかちゃんに物語を届けようと話し合って作り始めました。保育園に取材に行ったとき、編集者の征矢清さんが1才の女の子を抱き上げて、天井にそっと頭をつけてあげました。次々に集まってきた子どもたちが、天井に頭がつく瞬間を期待して、目をつぶるかわいい顔が忘れられません。
『でてこい でてこい』は、0.1.2.えほんの第一号です。原案は編集者の征矢さんでした。私はへびの絵だけ、どうしてもうまく描けなくて、とうとう彼の絵をそのままなぞってしまいました。へびは後ろめたい絵です。『ひよこさん』は、征矢さんの下絵をもとに、彼の死後に描いた絵本です。本物のひよこが見たいと思っていたちょうどその時、近所に来た催しで、足元の箱の中にかわいいひよこが走り回っていたのでびっくりしました。天国からの贈り物だ! と思った出来事でした。