あまがえる

たんぼの うた

かがくのとも|2025年5月号

田植えの季節、夜の田んぼはアマガエルたちの鳴き声でいっぱいになり、やがてたくさんのオタマジャクシが生まれます。この絵本では、オタマジャクシたちの1年間の成長を見つめます。田んぼのなかで、どのようにして大人のカエルに成長するのか。やがて田んぼを離れて、どんなところで生きていくのか。身近なカエル、アマガエルの生きざまを描いた絵本です。

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【作者のことば|澤口たまみ】

アマガエルのいる暮らし

アマガエルは、田んぼとその周辺の緑地を行き来して、いのちをつないできた生き物です。
東北地方の田園地帯に暮らしているわたしにとっては、最も身近で、最も魅力的な野生動物のひとつと言えます。

ボンゼルスの『蜜蜂マアヤ』(実吉捷郎訳・岩波文庫)のなかで、一匹のバッタがマアヤにこう言うのには、わたしも思わず膝を打ちました。
「あなたは未来のことが見えでもするんですかい。そんなことは誰にもできませんや。たゞ雨蛙だけはそれができるんですがね、しかしどうしてだかは、あいつも云ひませんよ」。
木や草の葉のうえで静かに休むアマガエルを、これほど的確に表現した一節を、わたしはほかに知りません。

彼らの瞳は穏やかで、柔らかな輝きを放ち、その口もとは、いつでも少し笑っているように見えます。
アマガエルは雨鳴きによって降雨が近いことを予告しますから、確かに未来を見ていると言ってもよいかも知れません。
その顔は、とびきり難しい哲学を考えているようにも、まるで無心のようにも感じられます。そんなアマガエルの姿を、日常的に親しく眺められるのは、なんと楽しく豊かな暮らしでしょう。

彼らの魅力は、田に水が張られたその晩から始まる、オスたちの大合唱にもあります。
地から湧くように盛り上がり、空に届かんばかりに響き渡るその声は、生きて春を迎えられた喜びに満ちていて、聴く者のこころをも、生きていられる喜びで満たすのでした。

アマガエルたちが、どんなふうに鳴いているのかを確かめたくて、夜の田んぼに通ったことがありました。
そっと近づいて懐中電灯を当てると、います、います、喉を大きく膨らませて、オスたちが一生懸命に鳴いています。
一頭ずつ、それぞれ声が異なっていて、個性が感じられました。耳を澄ますと、トウキョウダルマガエルやシュレーゲルアオガエルの声も聴こえてきます。

水の張られた田んぼには、ヤゴやタニシなど鳴かない生き物も姿を現しているでしょう。もちろんイネだって鳴いたりはしません。ですからアマガエルの声は、ただアマガエルだけが生きている証ではありません。田んぼという環境が、たくさんのいのちを育んでいることの豊かな表れなのだと、わたしには思われます。

初夏には庭先に現れ、秋までの日々を過ごすアマガエルたちを、わたしはうやうやしく迎え入れます。
彼らは田んぼ、いいえ自然といういのちのゆりかごからの、たいせつな預かり物だと思うからです。

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
28ページ
サイズ
25×23cm
初版年月日
2025年05月01日
シリーズ
かがくのとも
ISBN
テーマ

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