ふくねずみの歌が面白かった。
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作者のことば
『もろ』の思い出 まるやまあやこ
このお話は、ある日、ふっと浮かんできたイメージを描いた、一枚の小さな絵から生まれました。ねずみが両手にマッチ棒を持ち、お腹に抱えたマッチ箱をたいこのように叩きながら、こちらへ歩いてくる絵。
私の家はとても古く、ときどき、天井の方から生き物の気配を感じることがあります。古い家は不便も多いけれど、いつも何かに守られているような安心感を与えてくれるところが、とても好きです。この家で母と叔母が育ち、その後、私と妹が生まれました。
そして、この家には、祖母が『もろ』と呼んでいた昔の貯蔵室がありました。『もろ』は、ちょうど一階の和室の真下にあり、その和室で飛び跳ねたりすると、よく祖母に「下に『もろ』があるから、床がぬける!」と𠮟られました。その度に、私は足下の見えない空間を想像しました。『もろ』をじっくり見たのは、上の歯が抜けたとき。祖母が、「上の歯が抜けたら、下に投げると良い歯が生えてくるんだよ」と言って『もろ』の扉を開けてくれたのです。
床下の床板を上げると、石造りの階段が現れました。階段の先には、まるで古代のお墓のような空間がひろがっていました。薄暗いほうへ、私は自分の歯を投げました。はじめて上の歯が抜けたことと、秘密の地下室を見せてもらえた特別感が合わさり、『もろ』の記憶は私の中に強く残りました。母と叔母、私の妹の歯も、まだ『もろ』にあるのかもしれない。その歯を宝物にしているねずみが、この家のどこかにいるのかもしれない……。小さな絵の中のねずみは、そんな空想から生まれました。
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基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 32ページ
- サイズ
- 26×19cm
- 初版年月日
- 2024年04月01日
- シリーズ
- こどものとも
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
みんなの感想(1件)
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