こどものとも年少版137号

おばけが ぞろぞろ

こどものとも年少版|1988年8月号

びろーんと木のうろから出てきたのは、ぞぞまるちゃん。ごみかんの中からは、おろむか君。ぞんびえ君は消火栓からにゅーう。愉快なおばけが次々とび出して、さて誰を誘いにいくのかな? 

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夜明け前のおばけ  ささき まき

 小学五年生の冬、私は新聞配達をすることになった。ちびでやせっぽちの小学生がよく採用されたものだと思う。今から三十年前のことだ。
 真冬の夜明け前の町は、早朝というより深夜の続きといった方がふさわしく、まっ暗に静まりかえっていた。怖かった。   ある家の窓に首つり死体の影を見て、心臓がとまりそうになったことがある。
 よく見るとそれは、どうやらハンガーにかけられた着物が窓ぎわにつるしてあって、室内の豆電球によって生じたシルエットであるらしかった。
 ある時は、行く手の路上に死体がころがっているのを見た。  
 かなりの大男だ。ほんとに死んでいるのかしら。ぼくが近づくと急に起きあがっておそいかかってくるかもしれない。  
 ひざをがくがくさせながら近づくと――そこを通過しないと次の配達先へ行けないからだ――死体と見えたのは、トラックの荷台のシートが落ちてくしゃくしゃになったものだった。  
 新聞を入れようとすると決まって、ぶつぶつぼそぼそと、呪文ともなんともつかない声が聞こえてくる家があって、気味が悪くてしかたがなかった。  
 今にして思えば、おそらく受験生が何か暗記ものを声に出していたのだろう。  
 どの店もすべて雨戸をたてきった市場の中は、さながら深い洞くつのようで、夕方のにぎわいが嘘のようだ。その市場の中で、私はふと〈じっと見ている目〉を感じて振り返ると、ベニヤ板でできた小さな箱の中に、頭から毛布をすっぽりかぶった人間が目だけを見せて座っているのだった。私は思わずギャッと叫ぶところだった。  
 その人間は、市場の見張り番だったのである。私は今でも「即身仏」という言葉を目にすると、どういうわけか市場の見張り番の姿を思い浮かべる。  
 結局、新聞配達は三か月しか続かなかった。早起きがつらいのでもなく、配達がしんどいのでもなく、ひたすら夜明け前の町が恐ろしくて、それに耐えられなかったのだ。そして長い間そのことを恥ずかしいと思っていた。

(1988年)

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
24ページ
サイズ
21×20cm
初版年月日
1988年08月01日
ISBN
テーマ

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