バルバルさん もりへいく

【作者のことば｜乾 栄里子】

めざせ！ かわいいおばあさん

以前テレビで、震災の避難所へ出張してお仕事をされている床屋さんのニュースを見ました。のびた髪を切ってもらったり、顔を剃ってもらったり、さっぱりときれいにしてもらって大人も子どももとても嬉しそうにしていたのが印象に残りました。床屋さんに行けなくて困っている人がいたら、バルバルさんとおさるさんはきっと出かけて行ってふたりで力を合わせて楽しく仕事をするだろうと思ったのが、このお話の始まりです。

介護施設への出張美容サービスの様子を見たこともあります。髪を素敵にしてもらったり、お化粧やネイルをしてもらったお年寄りたちが「わあっ」と、嬉しそうに顔を輝かせている姿はとてもかわいくて、見ているこちらも嬉しくなったことを覚えています。

バルバルさんのお客さんたちも、みんな思い思いに喜びを表現しています。人が喜んでいる姿を見るのはいいものです。見ているだけで幸せな気持ちになります。けれど私は日頃からリアクションが薄く、心の中では喜んでいるにもかかわらず、素直に「わあっ」と、喜びを表すことがほとんどありません。その上、年々かわいらしさはなくなっていくばかりです。私もむじゃきにかわいく喜んで人を幸せにしたい。バルバルさんとおさるさんのように新しいことにチャレンジしなくては！

まずは、夫にほめられたときに「わあ嬉しい」と心からのキラキラした笑顔でその喜びを表現してみようと思います。さあ、心の準備はできました。いつどこからどれだけほめられても大丈夫です。がんばれ私。めざせ、かわいいおばあさん！