第8回 日本出版販売株式会社 王子流通センター(前編)
一冊の本は、どうやってわたしたちの手元に届いているのでしょう。3月刊行の『家をせおって歩く かんぜん版』が完成するまでの様子を、作者の村上慧さんが本作りの現場をめぐるエッセイでお届けします。第8回は日本出版販売株式会社さんにご協力いただき、出版流通の要、王子流通センターを見学させていただきました。
『家をせおって歩く かんぜん版』がとどくまで
第8回 日本出版販売株式会社 王子流通センター(前編)
そして3月6日、こちらもついに「本」となった『家をせおって歩く かんぜん版』を追って、王子駅へ向かった。今日は出版物の取次会社である日本出版販売株式会社(以下、日販)の王子流通センター(以下、王子DC)を見学させてもらう。王子DCでは主に、製本所で作られた新刊を集めて全国の書店に配送する仕事と、書籍を在庫として抱えて注文に応じて書店に配送する仕事のふたつを行なっている。僕は取次という仕事があるのは知っていたけれど、そこでじっさいどんな作業が行われているのかは正直よくわかっていなかったので、これも楽しみにしていた。
田村さんの説明によると日販が持つ主な流通センターは3つで、王子DCの他にねりまDCとCVS営業所があるという。CVSというのはコンビニエンスストア向けの流通センターで、主に雑誌を扱っている。3箇所とも東京だ。東京から全国の書店、コンビニエンスストアに届けている。王子DCやねりまDCではそれぞれ新刊分と注文分を合わせて1日約180万冊を流通させているという。大変な数だ。ここで1日でも流通が止まったら、全国に本が届かなくなってしまう。2011年3月11日の震災の際は、従業員全員で棚から落ちてしまった本を整理、なんと2日で復旧させたとのこと。本の流通を正確かつ迅速におこなうために日々工夫と開発を重ねている。
3月6日は『家をせおって歩く かんぜん版』が新刊として流通する記念すべき日。まずはその様子を順番に案内してもらった。
搬入口から入ってきた本は、新刊ラインにのせられる。200mくらいのベルトコンベアに段ボールが並べられ、ぐるぐるまわっている。合わせ鏡みたいに人が並んで立ち、それぞれの人の後ろには大量の新刊本が積まれている。それぞれの人が担当している数種類の本を必要な数だけ段ボール箱に入れる。この段ボール箱ひとつひとつが書店だ。書店としての段ボール箱がぐるぐるとまわっている。その書店に入荷予定の本の前を通る時、その本を担当している人が箱の中に本を必要な数だけ詰める。1つの箱がベルトコンベアを1周するころには、箱の中には書店に入荷する本が全て詰まっているというぐあいだ。
これはつまり『家をせおって歩く かんぜん版』を担当してくれている人がいるということだ!
先ほど書いたように、本がこの新刊ラインを通るのは1日限りで、しかも本にはその担当者がいる。書籍業務課の田口さんは、このことを「一期一会」と表現していた。毎日これだけ大量に本を扱っていると、本に対する見方や感じ方も違って見えてくるだろうと思う。書店で本を見る時と、王子DCで本を見る時とでは、同じモノでも見え方が全然違うと言っていた。
2019.04.15