季節の移り変わりの中で、花に心を寄せるひととき『さくらがさくと』
季節の移り変わりの中で、花に心を寄せるひととき
さくらがさくと
ぽつぽつと花が咲きはじめたと思っていると、あっというまに満開になり、またすぐに散ってしまう桜。つぼみがほころんでいく間も、満開のころも、散っていく様子も、それぞれの美しさがあって、毎年飽きることもなくながめてしまいますよね。その美しさとはかなさゆえに、古くから人々の心をとらえてきた桜ですが、絵本『さくらがさくと』でも、季節が移ろう中での桜の木と、それを見つめる人々の姿が描かれます。
3月半ば、川沿いの桜並木の下を、駅へ向かう人々がいつものように通り過ぎていきます。風はまだつめたいけれど、桜は少しずつ春への準備をしていました。きみどり色の芽がふくらんで、だんだんつぼみがほころび、やがて薄い花びらがひらきます。
開花に気づいた人々は足をとめ、少しずつ花開いていく桜の姿に、春の訪れを感じます。満開になった桜の下では桜祭りが始まり、週末には花見に来た人たちで賑わいました。見上げた先に広がるのは、ピンク色の天井。
そして夕方、雨が降り始め、夜には嵐に。朝になると、あたり一面が散った花びらで埋め尽くされ、まるでピンク色のじゅうたんのようです。それから数日が経つと……。
この作品を手がけたのは、とうごうなりささん。春の訪れから、新緑の季節へ向かう頃までを美しい色彩で描きだしました。うっすらとしたピンク色に包まれる桜には、岩絵の具チューブを用いた「スパッタリング」という技法が使われているそう。満開の桜を描いた場面では、人々の高揚感までもが感じられるようです。
なかなかお花見に出かけるのも難しいこのごろ。おうちの中で、春の訪れと桜の美しさを感じてみるのはいかがでしょうか。
担当・T
もうすぐ入社5年目。通勤途中に見える桜に、少し心がなごみます。
2020.03.27