海を調べることは地球を調べること ~海の日に親子で読みたいかがくの絵本『海』
海を調べることは地球を調べること ~海の日に親子で読みたいかがくの絵本
『海』
夏休みに海水浴や海辺でのキャンプを計画しているご家族も多いのではないでしょうか。泳いだり、砂浜で生きものを見つけたり、船を眺めたりと、海は子どもにとって魅力的な遊び場です。一方で、はるか遠くに見える水平線や、沖にでるほど深くなる海は、子どもの好奇心を駆り立てる未知の存在でもあります。
「ずっと遠くまで泳いだら何があるの?」「ずっと深くまで潜ったらどんな生き物がいる?」、そんな子どもの好奇心にしっかり答えてくれるのが、「だるまちゃん」シリーズで知られる加古里子さんが描いたかがくの絵本『海』です。
砂浜、波打ちぎわ、小さな漁船が浮かぶ遠浅の海……。内海を出るとそこに広がるのは世界で一番広い海、太平洋です。陸から離れるにつれて海は少しずつ深くなります。海の深さに応じてそこで暮らす生きものや、海底の様子もさまがわりしていきます。漁法も、陸からの距離や水深によって変わりますし、魚だけでなく生息するプランクトンの種類だって変わります。海底にも陸と同じように山や丘や盆地があり、海溝と呼ばれる富士山の高さの3倍近くもある深い溝もあります。
加古さんは自身の真骨頂とも言える「断面図」を使い、当時の海洋学の多様な研究成果をこれでもかと、この1冊の絵本の中に盛り込んでいます。30・31ページには海洋研究に大きな功績を残した歴代の観測船や、「流速計」「透明度板」など海洋調査に使われる機材が所狭しと描かれています。北極点近くの海を描いた36・37ページでは、「まっこうくじら」をはじめ色々なくじらのしおふきの高さが、ユーモラスなくじらの絵とともに記されています。22・23ページでは、加古さんが当時想像した未来の海底都市や海底工場が登場し、ページをめくるたびに私たちに驚きと興奮を与えくれます。
加古さんは「海は、未知で未開拓な分野だからこそ、海の本が必要だし、子どもたちに与える大きな意義が出てくるのではないか」といった専門家の励ましをうけ、7年もの歳月をかけて『海』を完成させました。そんな『海』の最後のページで、加古さんは「海を調べることは地球を調べること」と結んでいます。
7月17日は海の日。人類にとってはまだまだ未知な海とそして地球について、この絵本のページをめくりながら親子で思いをはせてみてはいかがでしょうか?
2017.07.14