日々の絵本と読みもの

子どもたちにクリスマスの楽しみを!『クリスマスのまえのばん』

『クリスマスのまえのばん』

クリスマスイブ、子どもたちはサンタクロースの運んでくるプレゼントを心待ちにしていることでしょう。「サンタクロースってどんな人?」とぜひ親子で話してみてください。おそらく「トナカイの引くそりに乗って」「煙突から家に入って」「子どもたちにプレゼントを届けにくる」「陽気なおじいさん」「ひげをはやした人」などのイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

そんなサンタさんのイメージの原点とされる「クリスマスのまえのばん」という一篇の詩があります。1822年にアメリカ・ニューヨークの神学校の教授だったクレメント・C・ムーアが自分の子どものために一晩で書きあげ、のちに「セントニコラスの訪れ」というタイトルで雑誌に掲載された詩は、アメリカ中で広まり、現在でも多くの子どもたちに愛されています。その詩に挿絵がそえられた絵本『クリスマスのまえのばん』をご紹介します。

「クリスマスの まえのばんのことでした。」「セントニコラスが はやく くるように と ねがいをこめて だんろの そばに くつしたが だいじそうに かけられています」
セントニコラスは、四世紀の初め頃に実在した聖職者で、裕福な家庭に生まれながらも困窮者を人知れず助け、子どもたちを愛したと伝えられています。12月6日のセントニコラスの日には、オランダ、ドイツなどでは、セントニコラスに尊敬の念をこめて、盛大にお祭りをするそうで、サンタクロースの本家本元とされている聖人です。

子どもたちがベッドの中で幸せな夢を見ながら眠りについたころ、外から「たいそうにぎやかな」音が聞こえてきました。お父さんが外をのぞいてみると、真昼のように明るく月が照っている空に見えたのは「ちいさい そりと 八とうの かわいい トナカイでした。」セントニコラスがやってきたのです。そりを屋根に待たせ、煙突からプレゼントを抱えたセントニコラスがすすだらけで、家に入ってきました。

プレゼントを入れた大きな袋を持っていて、くりくりした目、えくぼ、バラのような頬、サクランボそっくりの鼻、雪のように白いあごひげ、ゼリーのようにふるえる丸いおなか……。そんな愛嬌たっぷりの小人のおじいさんは、お父さんにウィンクで合図して、無言で仕事にとりかかりました……。



アメリカでこの詩を絵本に仕立てたのは『オズの魔法使い』の挿絵で知られる画家・ウィリアム・W・デンスロウです。デンスロウも姪のために愛情をこめて挿絵を描きました。また、絵本の翻訳は「エルマーのぼうけん」シリーズなどの訳で知られる、渡辺茂男さんが手がけました。鈴の音が聴こえてきそうなリズミカルな言葉が、子どもたちの夢を満たす楽しいクリスマスの情景を伝えます。

子どもたちにクリスマスの楽しさを贈りたいという作者・画家・訳者の思いが込められた本作を、ぜひ子どもたちに読んであげてくださいね。

2018.12.21

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