画家・安野光雅の美しくも不思議なアルファベットの世界『ABCの本 へそまがりの アルファベット』
『ABCの本 へそまがりの アルファベット』
『ABCの本』というと、アルファベットを覚える本かな?と思いますが、実はこの本、ABCの文字を徹底的に楽しんじゃおう、という絵本です。
ふだん、見慣れてしまっているABCですが、よくよく眺めてみると、なんて美しく躍動的で不思議な形なんでしょう。
たとえば、野球の帽子にはチームの頭文字が縫い付けられていますが、「A」「B」「C」「L」「M」といったロゴなど、とっても力強くおしゃれですね(それぞれどのチームかわかりますか?)。
この絵本で安野光雅さんが描いたアルファベットは、なんと、木片でつくった立体版! たとえば、Bの文字を木片で刻んで作っていくと、この通り!
1本の柱のてっぺんから、ぐるり、ぐるりと滑り台がふたつ続くと、なんとBの形になってしまうのです。そして、反対のページでは、Bの文字からはじまるBicycle=自転車の絵が、作者ならではの自由奔放な想像力で、ウィットとユーモアに味つけされて描かれています。さらに、それぞれのページを額縁のように囲っている線画の中には、Bean=豆があったり、Bee=ハチがいたり、Bell=ベルがあったり、Bird=鳥がいたり、まるで謎解きのようにBからはじまるものが隠れています。この後に生まれていく『旅の絵本』や『もりのえほん』にも似た世界です。
アルファベットは合計で26文字。すべての文字が見開き単位でじっくり紹介されていますが、刊行時には、アルファベットの本場、英米でも同時期に出版され、元小学校美術教師安野光雅さんの名が世界中に広がっていきました。
近年、小学校で英語教育もはじまりましたが、学びの入り口としてもぜひお薦めしたい作品です。
実は、『ABCの本』の刊行1年後、このアイデアを生かして作った絵本が『あいうえおの本』です。
安野さんは、この本で日本の「伝統的な形」と「ことば」とを結びつけようとされましたが、登場する絵は、あんぱん、いえ、うなぎ・うめぼし、えま(絵馬)、おめん、かとりせんこう……、と、安野さんが故郷の島根県津和野で幼いころ親しんだものばかり……。
どうぞ、美しいふたつのことばの世界をお楽しみください。
担当S 小学生のころ、ローマ字で書いた日本語は、アメリカやイギリスの人にも通じるものだと思っていました~。
2024.05.20