ゆうべのおもちゃ 12 貝あわせ
もっと子どもと遊びたいのに、ついつい家事や仕事に追われてしまって……。そんな日々のすきま時間に、がんばらずに楽しめる手作りおもちゃを、毎月1つご紹介してきた「ゆうべのおもちゃ」。最終回は、おひなまつりにぴったりな「貝あわせ」です。
貝あわせ
ぴょん一が通った幼稚園では、子どもの手のひらほど大きなハマグリに絵を描いて、貝あわせを作ってくれていました。貝殻2枚がかちっとくみ合うときの感触は、子どもでなくとも何度もくり返したくなる気持ちよさです。そのうち、家でもハマグリを食べたあとの殻をとっておいて、同じように作ってみるようになりました。アサリでは、うまくいきません。純白のなめらかな面を持つ肉厚の殻は、いまが旬のハマグリならではのものです。
ハマグリの殻をよく洗って乾かしたら、対になる2枚を選んで、同じ絵を描きます。いく組かできたら、ふせて並べ、トランプの神経衰弱のルールで遊びます。じつは、貝殻の模様は全部ちがうので、それをヒントに裏返せば、たいてい正解してしまいます。それではつまらないので、わたしは、表面を塗りつぶしてしまいました。
その昔、ぴょん一といっしょに作ったのは、おもに絵本やテレビ番組のキャラクター。ぴょん子のラインナップはお姫様やウサギ。当人以外は、シンデレラとねむり姫の区別にとまどうところですが、貝あわせなので、大丈夫。かっちりくみ合えば正解だし、あわなかったらだめってことです。
「ゆうべのおもちゃ」の売りは、「翌朝にはゴミ!」の気軽さなのですが、この貝あわせばかりは永久保存扱いです。年に一度取りだし、ときには新しい絵柄の貝を作り足し、家族の歴史を積みかさね…… なんて、きれいにまとまりそうになったところで、連載終了です。一年間おつきあいありがとうございました。
堀内紅子(ほりうち・もみこ)
1965年、東京都生まれ。翻訳家。訳書に『ラバ通りの人びと』『三つのミント・キャンディー』『ソーグのひと夏』『わたしの世界一ひどいパパ』、絵を担当した絵本に『くまとりすのおやつ』(以上福音館書店)などがある。東京都在住。現在、世田谷区の子育て支援拠点「おでかけひろば」で保育士として修行中。
※ 月刊絵本「かがくのとも」の折り込みふろく(2008年4月号から1年間連載)より転載。当時12歳の長男”ぴょん一くん”と3歳の長女”ぴょん子ちゃん”と一緒に楽しんだ手作りのおもちゃについて綴ったエッセイを、当時のままにお送りしました。
2020.02.28