日々の絵本と読みもの

土ってどこにあったっけ? 「かがくのとも」記念すべき600号は土の話です。

土ってどこにあったっけ? 「かがくのとも」記念すべき600号は土の話です。

『つちはどこ?』(「かがくのとも」2019年3月号)

先日、家で飼っていたドジョウが死んでしまいました。さあ、土に埋めてやろうと思っても、自宅の周りは砂利、目の前の道はアスファルト……。都会では、土がむき出しになっている場所は少ないなあと実感しました。

今月号で600号を迎える月刊絵本「かがくのとも」3月号『つちはどこ?』は、トマトの苗を植木鉢に植えようとした女の子の土探しを追った絵本です。まず女の子がぶつかったのは「つちって どこにあったっけ?」という疑問でした。この子の身近なところにも土はないようです。おうちには庭はないし、道路のマンホールの周りにちょっぴり出ている土では足りないし……。

植木鉢とシャベルを片手に工事現場に来てみましたが、工事現場の人には砂利だらけの土を入れても育たないよと言われます。次は公園の土を何箇所か掘ってみますが、砂だったり、ぱさぱさしていたり、べたついていたり……。トマトの苗についている土とは、なんだか違うようです。

そこに虫博士のお兄ちゃんが登場し、一緒に裏の林に入ります。枯れ葉がぎっしりつもっているふとんみたいな林の地面。まず、枯れ葉をどかして土を探します。すると、「ぼろぼろ の かれはのしたに つち みっけ!」ついでに土の中にダンゴムシもいっぱい見つけます。お兄ちゃんに、土にはダンゴムシのうんちが混じっていることを聞いて驚く女の子。
ダンゴムシやミミズのうんちが混じった土が、はたして植木鉢の土に適しているのでしょうか。

作者の坂井治さんは、土と私たち人間はまるで一心同体のように感じると語っています。小さな生き物の目に見えないほどのちっちゃなうんちが、栄養としてまざってできた土によって、植物が育ちます、土こそが、私たち生物を支えてくれているというメッセージが込められている絵本です。アスファルトの下に、私たちが意識せず足元で踏んでいる土と、生きものの命がつながっていることに思いを馳せて、絵本を楽しんでくださいね。

また、今月号は記念すべき「かがくのとも」600号です。「かがくのとも」には毎月、ポスターが付録で付いているのですが、今回は、安野光雅さんの描き下ろし!「おめでとう かがくのとも 600 号」ポスターです。また、「うたがいの目を持てるために」というタイトルで、子どもと科学について、安野さんがたっぷり語っている談話も収録されています。こちらも合わせてご覧ください。



「日々の絵本」月曜担当・H
入社15年目。舞台鑑賞が好きです。子連れで楽しめる作品を中心に月2~3本鑑賞しています。

2019.02.04

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