きらきらと、なないろの雨がふってくる。『あめかな!』
『あめかな!』
暗い空から、ふりだした雨。ぽつ ぽつと、赤い雨つぶ、青い雨つぶ。
びしゃっ ぱしゃっと、大きな青いしずくになった雨つぶ。
そして、青や紺、緑のしずくがざあざあ、ざあざあ。なないろの雨がふってきた。
赤ちゃん絵本「0.1.2.えほんシリーズ」の『あめかな!』は、雨がふりだし、やがて本ぶりとなり、それから雨があがるまでの時の流れを、象徴的に描いています。赤ちゃんの感性にダイレクトに訴えかける色彩と、耳に心地よい擬音語があいまって、今から20年前の月刊誌刊行時には大きな反響を呼びました。
にじんだように見えるしずくが、白い画面にカラフルで、はっとするほど鮮やかな印象をあたえる本作。作者は、グラフィックデザインの分野で多面的な活動をされた、U.G.サトーさんです。
小さな子どもの絵本は考えて作るのではなく、遊びながら作ろう! と、制作にあたっては、前もって話の筋を作らず、若いころ使っていたカラーインクで絵具遊びをしてみたそうです。
ムラやにじみなど、インクと水でできるさまざまな現象。筆いっぱいに含ませた青色のインクを高いところから白い紙に落とすと、落ちたインクの跡はしぶきを散らした王冠のように美しくみえたそうです。さらに、カラーインクをたらし、紙を傾けることでインクの筋が生まれ、紙の上を走ってゆく。また、それぞれの色がにじみ合いながら拡がっていく。
そうやって、遊びのなかで発見したイメージから、雨をテーマにしたストーリーができるのではないか、と思い至ったそうです。
具体物を描いているわけでもなく、説明的なことばがついているわけでもない。
編集部は、色やかたちで構成された絵本を赤ちゃんが好むということはわかっていたものの、より抽象性が高く、挑戦的な作品でもあったため、刊行当初、どんな反応がかえってくるだろう、と内心ドキドキハラハラだったそうです。
しかし、なんとなんと、おたよりが続々と寄せられたのです。何度もくりかえし読まされました。きゃっきゃと声を上げて喜びました。なめてかじって、全身で絵本を味わっていました、などなど。赤ちゃんの感受性は、大人が思っている以上にやわらかく、のびやかなものなのですね。
この世界に生まれて間もない赤ちゃんにおくる絵本として、ぜひ一緒に読んでみてほしい1冊です。絵本をとおして、雨との出会いがもっとすてきなものになれば、こんなうれしいことはありません。
担当M
私が好きな場面は、雨がやみ、光がさすところです。雨上がり、すべてのものがきらきら輝いてみえる光景が目に浮かびます。
2023.06.16