三者(豆)三様、あずきの3きょうだいの夢は叶うのでしょうか? 『あずきの あんちゃん ずんちゃん きんちゃん』
『あずきの あんちゃん ずんちゃん きんちゃん』
あずきは、お赤飯として何かお祝い事の時に食べたり、羊羹、おはぎ、大福、たい焼き、あんパンなどの美味しい食べ物になったり、さらには枕やお手玉の中に入っていたりと日本人にはとても馴染みがある食品です。とはいえ、あまり絵本のテーマにはならない?! あずき(しかも3きょうだい)が主役の絵本を紹介します。
ある日、お手玉がほつれて、中からあずきが3粒こぼれ落ちました。それは、あずきの3きょうだい、あんちゃん、ずんちゃん、きんちゃんでした。外に飛び出した3人には、それぞれ将来の夢がありました。
1番上のあんちゃんは「あずきの あんちゃん あははのは あたしは あまぁい あんこになるの」
2番目のずんちゃんは「あずきの ずんちゃん ずしんずしん ずうたい でかいぜ だいずになるぞ」
末っ子のきんちゃんは「あずきの きんちゃん きがながい きらくに きままに くらしたい」
夢をかなえようと、あんちゃんは和菓子屋さんへ、ずんちゃんは大豆の仲間に入れてもらおうと頑張りますが、夢は叶わず、ふたりは「あーん」「ずーん」と落ち込みます。そんなふたりをみて、気楽なきんちゃんは「ねえさんも にいさんも きにしない。きらくに きままに くらしましょう」とふたりをはげまします。
そんなとき、大きなカラスがやってきて、なんと3きょうだいはごくりと飲み込まれてしまします! さてさて、3きょうだいはいったいどうなるのでしょうか? カラスに飲み込まれたあとの、3きょうだいの様子もまさに三者(豆)三様……。カラスのお腹の中から、運よく逃げ出した3きょうだいそれぞれには、個性が実る素敵な結末が待っていますよ。どんな結末かは、ぜひ絵本をひらいてみてください。
今作は、2018年の3月号「こどものとも」として刊行された作品をハードカバーにしたものです。「こどものとも」は5、6才向けの月刊ものがたり絵本。対象年齢である年長の子どもたちにとっては、ちょうど卒園の季節に届いた作品です。春には小学校にあがる子どもたちが、将来の自分を思い描く機会も多い時期です。親やおとなとしては、夢に向かって頑張って願いを叶えてもらえればと思うと同時に、今の自分らしくありのまま過ごせますように……とも強く願います。
この作品には「子どもは、自分らしく元気に育ってくれさえすれば充分! 持って生まれたものをそっくりそのままに輝かせてほしい」という作者のとみながまいさんの思いやエールが込められています。そして、植垣歩子さんが描くあずきの3きょうだいは、それぞれの性格が表情にあらわれ、親子でとても楽しく読むことができます。
担当A
「きらくに きままに くらしましょう」と口にすると、なんだか気が抜けて、穏やかな気持ちになります。食べたらほっと幸せになる、あまーいあんこのような魅力ある絵本です。
2023.02.01