創立70周年記念|リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」

「おもしろくってわくわくする」物語|童話編集部

2022年2月、福音館書店は創立70周年を迎えました。福音館書店には、刊行している書籍や雑誌(月刊絵本)、ジャンルや対象年齢によって、10の編集部があります。70周年を記念し、読者のみなさんに福音館の本により親しんでいただけるよう、リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」と題して、毎月各編集長のエッセイをお届けしています。第8回は、小学生以上の読者に向けて、創作童話や翻訳童話、昔話や古典童話などを刊行している「童話編集部」です。

「おもしろくってわくわくする」物語

童話編集部編集長 橋本露亜

童話編集部は、小学生以上の読者にむけて、創作童話、昔話、翻訳童話、古典童話など、年齢も内容もはばひろい作品を担当しています。

1963年刊行の『エルマーのぼうけん』にはじまり、親子3代にわたって読みつがれているロングセラーも多くありますが、それだけではありません。今を生きる子どもたちにぴったりの、新しい物語をわたそうと、日々奔走しています。5人のメンバーは個性豊かで、好きなものは子どもの本にとどまらず、マンガ、ファッション、ヨガ、キャンプ、旧東欧全般、猫、犬、旅と食べ歩き、お酒、インテリア……語りつくせないほどいろいろです。そんな5人で、子どもたちの「おもしろい」はなんだろうと、アンテナを張り、企画を考えています。

最近よく話しあっているのは、小学校初級向きの作品についてです。

「絵本の読み聞かせをしてきたけれど、小学生になったらなにを読んだらよいの?」と聞かれることがあります。自分で読める本は内容が幼いことがあり、おもしろそうと選んだ本は、読むのがたいへんで、途中で放りだしてしまうことがあるというのです。

小学生になると、子どもたちの世界はぐーんと広がり、好奇心はますます高まります。

「もっと冒険したい。おもしろくって、わくわくする本が読みたい」という期待にこたえつつ、1〜2年生が読みきれる長さの本は、まだまだたりないのかもしれません。

童話編集部では、「おもしろくってわくわくする」ことがつまった初級向きの物語をより充実させていく予定です。そこからまた、長く愛される作品が生まれたらうれしいです。

それから、小学生も楽しめる絵本や、自分で読むのはたいへんでも、読んでもらうと、心から楽しめる物語が、福音館にはたくさんあります。毎日新しいことを吸収するのに大忙しの小学校初級の子どもたちだからこそ、想像力に身をゆだねる読み聞かせの時間がまだまだ大切で、心を満たしてくれるように思います。そういえば、読者の方から伺っておどろいたのは、古典童話『二年間の休暇』を1ヵ月かけて読み聞かせたという報告でした!

読んでもらっても、自分で読んでも、本の扉を開けばすてきな冒険がまっている。そのことを知ったら、本は一生の友だちになってくれると思います。

▼私のお薦め・好きな1冊。

『バンビ』フェーリクス・ザルテン 作/酒寄進一 訳/ハンス・ベルトレ 画


初めて読んだ子どものころは、バンビが森の茂みでうまれるシーンがだいすきで、部屋のすみや椅子のしたで、緑色の布をかぶり、バンビの気持ちになっていました。自然のなかで、動物が生きることが描かれたお話だと思っていました。

大人になってまた、この『バンビ』に出会いました。すべての生命の輝きと、そこにつきまとう虚しさを感じました。わたしたち人間もふくめて、この世界に生きるということ、そして「神さま」とはなにか、ということまで思いを馳せました。

たくさんの本を読むのも楽しいけれど、とくべつな1冊をみつけて、人生のさまざまなステージでくりかえし味わうのも、とびきりのぜいたくだとおもいます。そういう喜びを感じさせてくれる1冊だと思います。


リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」
第1回「こどものとも第二編集部」はこちらから。
第2回「こどものとも第一編集部」はこちらから。
第3回「ちいさなかがくのとも編集部」はこちらから。
第4回「かがくのとも編集部」はこちらから。
第5回「たくさんのふしぎ編集部」はこちらから。
第6回「母の友編集部」はこちらから。
第7回「絵本編集部」はこちらから。

2022.09.01

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

記事の中で紹介した本

関連記事