創立70周年記念|リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」
読んでいる時間が幸せでありますように|絵本編集部
2022年2月、福音館書店は創立70周年を迎えました。福音館書店には、刊行している書籍や雑誌(月刊絵本)、ジャンルや対象年齢によって、10の編集部があります。70周年を記念し、読者のみなさんに福音館の本により親しんでいただけるよう、リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」と題して、毎月各編集長のエッセイをお届けしています。第7回は、単行本の書籍で創作絵本や翻訳絵本を刊行している「絵本編集部」です。
読んでいる時間が幸せでありますように
絵本編集部は、おもに創作絵本と絵童話、翻訳絵本を担当しています。
絵本編集部の担当作品のなかで「一番古いものは?」と調べてみたら、1961年刊行の翻訳絵本、『100まんびきのねこ』でした。アメリカの絵本作家ワンダ・ガアグによって描かれた「モノクロの絵」と「横長の形・横書き」は、その頃の日本ではとても珍しかったようです。
当時の編集者 松居直は、1956年に「こどものとも」を創刊した後、「欧米の優れた面白い絵本を日本の子どもたちに」という強い思いで、次々と翻訳作品を刊行しました。1965年刊の『三びきのやぎのがらがらどん』(アメリカの作家によるノルウェーの昔話)や『てぶくろ』(ロシアの作家によるウクライナ民話)など、今もなお子どもたちにたのしまれている作品がたくさんあります。
約60年後の現在、社会はだいぶ変化しました。海外旅行は身近になり、書店には子ども向きの本が満ちています。そんな今、私たち絵本編集部ができること、今だからやらねばならないことを考えつづけながら、子どもたちに絵本を届けていきたいと思っています。
「絵本を通じてこういうことが伝われば…」「こんなふうに感じてもらえれば…」など、作品によって思いはさまざまありますが、なによりも、“絵本を読んでいるとき、そのものが、その子にとって、たのしく幸せなものでありますように”というのが一番の願いです。
以下のようなメンバー4人で、日々試行錯誤しながら編集しています。今後どんな作品が刊行されるか、どうぞお楽しみに!
●紙の地図が好きです。ふだん携帯しているのは、15年前の道路地図ブック。打ち合わせ場所に向かうときには、地図ブックをめくりながら、15年前の街並との変化もたのしみながら歩きます。子どもが夢中になれる地図の本ができないかなと目下構想中です。(N)
●自炊派です。最近は、らっきょうの醤油漬けを仕込みました。昨冬には初めて自家製キムチにも挑戦しました。最近の料理のテーマは「できるだけ少ない種類の食材から、どれだけ手間をかけずに、満ち足りた料理を作れるか」ということ。シンプルで美味しい“名も無き料理”の魅力を子どもたちに伝えられないかと企画を練っています。(S)
●大変遅ればせながら大尉と財閥令嬢が主人公の某韓国ドラマにハマり、現在6巡目。通勤時にもドラマ音楽をつい聴いてしまうんですが、聴きながら今朝は、ドラマに登場する4人組について思いをめぐらせ、いろいろな物語における4人組、その特徴、3人組や5人組との違いについてあれこれ考えたりしていました。(I)
●甘いものが大好きで、全国各店のスイーツを数多く食べてきました。ふだんは、石橋を叩いて叩いて叩きまくって結局渡らないことも多い性格ですが、スイーツに関しては叩くの不要、石橋をチラ見しただけで即判断の自信アリ。今日も“仕事のおともスイーツ”を食べて、子どもたちも大好きなお菓子がたくさん登場する絵本を検討しているところです。(本日は、後楽園にある某店のキャラメルシュークリーム)(T)
▼私のお薦め・好きな1冊。
『ぶたぶたくんのおかいもの』土方久功 作・絵
子どもが小さいころ、毎晩寝る前に絵本を一緒にたのしんでいました。今思い返すと、「読んであげた」というよりも、「読ませてもらっていた」なあ、とつくづく感じます。“声に出して読む”という行為には、大きな解放感と、その日の疲れを発散させてくれるような心地良さがありました。特に思い出深いものに、『ぶたぶたくんのおかいもの』があります。いったい何回読んだことでしょう。
ぶたぶたくんの発する「ぶたぶた」という口ぐせを声色を変えて読んだり、八百屋の早口おねえさんのセリフを、これでもかというくらい早口で読んだり、お菓子屋のゆっくりおばあさんのセリフを、子どもが「おそすぎるよ~!」と急かすくらい、ゆーーーーっくり読んだり……。読むたびに、いろいろなアレンジを加えてたのしんでいました。
なんともいえない味わいの絵も素晴らしく、土方久功さんのおおらかなタッチは、毎日慌ただしくキュウキュウしている私の心をやわらかくときほぐしてくれるようでした。
おとなにとっても、絵本はいいものです。
リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」
第1回「こどものとも第二編集部」はこちらから。
第2回「こどものとも第一編集部」はこちらから。
第3回「ちいさなかがくのとも編集部」はこちらから。
第4回「かがくのとも編集部」はこちらから。
第5回「たくさんのふしぎ編集部」はこちらから。
第6回「母の友編集部」はこちらから。
2022.08.01
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