イカの忍者のユーモラスな絵童話 『イカにんじゅつ道場 ただいま弟子ぼしゅうちゅう』
『イカにんじゅつ道場 ただいま弟子ぼしゅうちゅう』
「せっしゃは、にんじゃでござる」
苦しい修行を積み重ね、忍術を極めてようやくイカにんじゅつ道場を開いたイカの忍者のおはなしです。
イカ師匠の性格は食いしん坊。弟子を待ちながら、「ああ、おなかがすいたなぁ」と思っていたら、ほっそりとした貴公子のような魚・キスが「にんじゅつをまなびたいとおもっております」と弟子入りを志願します。キスは海の底にいるカニが大好物ですが、すぐに逃げられてしまうので、<雲がくれの術>を学びたいとのこと。さっそくイカ師匠は長く伸びる2本の腕を合わせて印を結び、<雲がくれの術>を披露すると、それは見事な忍術で、キスは「ししょう。わたしには、ししょうがどこにいるのか、まったくわかりません」と尊敬のまなざし。師匠のようにうまくできないキスに「ええい、こうじゃ、こう」とイカ師匠は教えようとしますが、なんと次の瞬間、ぱくり! と弟子を食べてしまいます!
その後、カニ、クラゲと弟子入りをしてきて、<変わり身の術><魅了の術>とイカ師匠は弟子に忍術を教えようとするのですが、どうしてもお腹がすいて、つい弟子をぱくりと食べてしまうのです。3匹の弟子を食べておなかがいっぱいになったところに、なんとイカが大好物だというクジラが弟子入り!? 今度は逆に自分が食べられそうになり、イカ師匠がくりだしたのは、イカスミによる<分身の術>。クジラから逃げる計画は、はたしてうまくいくのでしょうか?
弟子を食べたあとも「すまん。ゆるせ。」と謝るかと思いきや「いや、せっしゃのせいではない。おなかがぺこぺこのときに、ちかくにいるキスが あまいのじゃ。」「おなかのキスが、このカニをたべたがっていたのでござる。」と言い訳ばかりのイカ師匠なのですが、なぜか憎めない、魅力たっぷりの愛すべきキャラクターです。
とぼけたイカ師匠と弟子たちのやりとりが楽しいお話を香桃もこさんが、そしてそんな魅力あるイカ師匠のユーモラスな表情や楽しい海の中の様子を岡田よしたかさんが描きます。
すべての見開きページに入るたっぷりの挿絵と、テンポのよいお話、そしてイカの師匠の言い訳の多いセリフなど、本を読むのが苦手な子どもたちでも手に取りやすい絵童話です。はじめて一人で読む本としておすすめできる本です。
担当A・小2の長男が楽しんで一人で読んでいました。忍者の言い回し、言い訳だらけの師匠とハマる要素満点でした。
2022.07.22