作者のことば 得田之久さん『ちゃぷちゃぷ ぷーん』
2017年に月刊絵本「こどものとも0.1.2.」として刊行された、『ちゃぷちゃぷ ぷーん』(得田之久・文/及川賢治・絵)が、今月ハードカバーになりました。いろいろな動物たちの遊ぶ姿が楽しい絵本ですが、文章を手掛けたのは、昆虫絵本の第一人者としても知られる得田之久さんです。弾むような言葉で赤ちゃんを魅了する本作は、得田さんがお孫さんと遊んだ日々の体験から生まれました。このたび、ハードカバー化を記念して、月刊誌刊行時の「作者のことば」をお届けいたします。
誕生の裏に
得田之久
近くに住む4人の孫がまだ幼かった頃(0、1、3、4歳)、我が家に毎週のように遊びにきていたのだが、遊び担当だったじいじは孫の喜ぶ遊びを考え出すのにいつも苦慮していた(本当は楽しみ)。
定番のかくれんぼや鬼ごっこはすぐに飽きてしまう。そこでなんとか受けを狙って色々新しい遊びを考え出し、中にはかなり品位に欠ける遊びも取り入れたのだが、これは親やばあばの叱責を受け断念せざるをえなかった。
そんな遊びの中でも、我が家で最も長い間楽しんだのは、オーソドックスな遊びをなにかの動物に変身してやるというものだっだ。
例えば、鬼ごっこではジャンケンに負けた者はゴリラになり、捕まった者たちも次々とゴリラになるという具合に。この遊びは孫たちから大いに喜ばれ、皆がゴリラになりたがったので、途中で鬼ごっこなのかなんなのか、わからなくなるほどだった。その他にもシーツを下半身に巻き付けてやる蛇競争。身体を丸めてダンゴムシになるゴロゴロごっこ(この遊びはじいじが背骨を痛めて即刻中止になった)。このような変身遊びは我が家での定番となり、噂を聞いた他の家族にも大いに採用されたと耳にして、考案者のじいじは鼻を高くしていた。
ただし、この遊びの継続を延々と要求してくる孫たちのエネルギーに、じいじはいつも白旗をあげていた。それもそのはず、考えてみれば、まだ体内にワニやゴリラの野性を残した孫たちとの動物ごっこに、じいじはかなうわけがない。
この絵本はその頃を想い出して発案した本である。
得田之久
昆虫をテーマにした作品が多い。絵本に『昆虫』『ぼく、だんごむし』『ぼく、あぶらぜみ』『わたし、くわがた』「こんちゅうの一生シリーズ」(全5冊セット)『おなかのすいた ばったのトト』『とまとさんの あかいふく』(「こどものとも0.1.2.」2008年8月号)『かえるくんとけらくん』(「こどものとも」2010年7月号)『ちいさないきもの むし』(「かがくのとも」2011年3月号)『だれかがきたよ』(「こどものとも年少版」2013年2月号)『くさむらで みつけたよ』(「かがくのとも」2014年4月号・以上、福音館書店)、『まるまるころころ』(童心社)など多数。神奈川県在住。
2022.06.24