学校図書館だより

【エッセイ】にぎやかな図書館をつくる|庭井史絵さん

庭井史絵

 小・中・高の司書・司書教諭として20年間仕事をしたあと、教育学を学ぶ先生や、司書・司書教諭・学校司書を目指す学生を教えるようになりました。どの授業でも、最初に学校図書館の利用経験を尋ねたり、絵を描いてもらったりするのですが、大学生がイメージする「学校図書館」は「読書」と「自習」の場であり、調べ学習で使った…という記憶がわずかにあるぐらいです。
 経験主義教育を提唱したジョン・デューイという教育学者は、学校図書館が工作室、食堂、調理室、織物作業室に囲まれている校舎の図を描き、「そこ(図書館)は、子どもたちが諸々の経験、諸々の問題、諸々の疑問、彼らが発見した諸々の個々具体的な事実を持ち寄って、それらのものについて議論する場所」と述べています(『学校と社会』岩波書店、1957年)。議論する相手は、目の前のクラスメートかもしれませんし、そこにはいない人(=本)かもしれませんが、いずれにせよ、学校図書館は一人で静かに学ぶだけの場所ではないのです。

今、学校教育で重視されている探究学習では、見たり聞いたり作ったり体験したりしたことを踏まえ、自ら考えることが求められます。学校図書館は、子どもたちが個々の経験をさまざまな情報と結びつけて考える場所となる必要があり、そのためには、静かに本と向き合うだけではなく、手を動かし、議論できる環境を用意しなければなりません。学びの場として生かされている学校図書館はどこも、子どもたちが自由に読んだり、聞いたり、対話したり、作ったりしながら情報を集め、活かし、発信している姿を見ることができる、創造的でにぎやかな場所になっています。


例えば、小学校図書館には校庭で見つけた爬虫類が持ち込まれ、子どもたちがヤモリかイモリか時間を見ながら議論しています。中高の図書館では本から集めた情報を持ち寄り、ホワイトボードを囲んで活発な話し合いが行われています。また、数学の課題で難しい折り紙に挑戦していたり、発表に使う模造紙を広げてカラーペンを駆使してまとめたり、そんな姿が学校図書館の中で見られます。
読書と調べものと自習のための静かな場…。学校図書館のこんなイメージがよい意味で裏切られ、読むこと、話すこと、つくること、考えることがみんなでできる場になってほしいと思っています。

庭井史絵(にわい・ふみえ)
青山学院大学教育人間科学部准教授

写真:(上)山崎学園富士見中学校高等学校図書館Learning Hub (中)鳥取県立米子東高等学校図書館 (下)高森町立高森北小学校図書館
 

2021.01.10

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