ゆうべのおもちゃ 8 ミカンの皮
もっと子どもと遊びたいのに、ついつい家事や仕事に追われてしまって……。そんな日々のすきま時間に、がんばらずに楽しめる手作りおもちゃを、毎月1つご紹介します。第8回は「ミカンの皮」です。
ミカンの皮
夕飯後、みんなでミカンを食べていたら、ぴょん子が「見て、見て、トリだよ」と声をあげました。すぐには、わからなかったのですが、確かに、むいたあとのミカンの皮が、くちばしが大きくて太い「鳥」に見えるのです。写真でいうと、左上の皮です。どうでしょう。え?見えない?
そのつもりになって眺めてみると、誰がどうむいた皮でも、何かしらのかたちに見えてきます。わたしが、へたの反対から始めて放射状にむくと、たいていはおへそがある大の字の人間。ちょっと意識してカーブさせたり、長い部分や短い部分ができるようにむいてみると、宇宙人、ウサギ、恐竜、ザリガニ・・・・・・。
どんどん試したくなって、もうミカンが食べたいんだか、皮がむきたいんだか、わかりません。感触といい、思い通りにならないところといい、紙をちぎるのとは、全くちがう楽しさです。
おなかはいっぱい、テーブルは皮だらけ。みんなで、どれが何に見えるか見えないかの品評会です。同じものを見ながら、それぞれちがうことを考えてるのが面白くて、なるほどと思ったり、大笑いしたり。へたがどこにあるのかが重要なポイントですが、もちろん、マジックで目や鼻を書き足したってかまわないのです。
ひからびてきたら、ネットに入れてお風呂に入れてやりましょう。幸せなミカンの皮の一生として、完璧です。
堀内紅子(ほりうち・もみこ)
1965年、東京都生まれ。翻訳家。訳書に『ラバ通りの人びと』『三つのミント・キャンディー』『ソーグのひと夏』『わたしの世界一ひどいパパ』、絵を担当した絵本に『くまとりすのおやつ』(以上福音館書店)などがある。東京都在住。昨年、保育士の資格を取り、世田谷区の子育て支援拠点「おでかけひろば」で修行中。
※ 月刊絵本「かがくのとも」の折り込みふろく(2008年4月号から1年間連載)より転載。当時12歳の長男”ぴょん一くん”と3歳の長女”ぴょん子ちゃん”と一緒に楽しんだ手作りのおもちゃについて綴ったエッセイを、当時のままにお送りします。
2019.11.25