絵本作家の誕生日

10月16日 ルース・エインズワースさん|子どもの心を満たす物語の名人

月に1回、その月にお誕生日を迎える作家・画家とその作品をご紹介する「絵本作家の誕生日」。10月16日は、子どもの心を満たす物語の名人、ルース・エインズワースさん(1908-1984年)のお誕生日です。

子どもの心を満たす、しあわせの物語。お話作りの名人

ルース・エインズワースさん(1908年10月16日生まれ)


その名を聞いてもピンとこないかもしれませんが、絵本『こすずめのぼうけん』の作者といえばご存じの方も多いのではないでしょうか。
おかあさんすずめに、はじめて飛び方を教わって、思い切って飛びたったこすずめは、飛べたことに興奮して、石垣をこえ、ひろい野原まで飛んでいってしまいます。  
やがて疲れてきたこすずめは、鳥の巣を見つけて、休ませてもらおうと訪ねますが、「かあかあ」いえないのでからすに断られ、「くうくう」いえないのでやまばとに断られ、ふくろうにも、かもにも断られ、やがてあたりは暗くなってきました。  
とうとう飛ぶこともできなくなり、地面を歩いていたこすずめの前に、一羽の鳥が姿を現します。それは、おかあさんすずめでした。背中にのせられて巣に戻ったこすずめは、その夜、おかあさんの翼の下でぐっすり眠るのでした。   
このお話を訳した石井桃子さんは、絵本にするにあたって「原文を一行一行読み返し、話の骨格がいかに立派にできているか、作者がいかにひとことをもゆるがせにしていないかに驚かされました」と書いています。 

ルース・エインズワースさんは、1908年イギリスのマンチェスターに生まれ、双子をふくむ3人の息子を育てながら、子どものための詩やお話を数多く発表しました。その作品は、イギリスのBBCで放送されていた人気ラジオ番組“Listen With Mother”で親しまれました。エインズワースさんは、小さいときから詩を書くのが大好きで、母親になってからは息子たちにお話をしてやるのが何よりの楽しみだったそうです。

木に登って降りられなくなった双子の子猫の物語『しおちゃんとこしょうちゃん』も、親子の絆を感じさせる物語ですが、それはとてもさりげなく、母猫と子猫の当たり前の姿として描かれています。
また、貧しいおじいさんが寒い冬にやってきた不思議な黒ねこに食べ物をすべてやってしまう物語『黒ねこのおきゃくさま』や、クリスマスイブにサンタクロースを助けた『ちいさな ろば』は、じんわりと心に染みわたる味わい深い物語です。

エインズワースさんの物語は、どれも子どもたちの驚きや不安、また不思議な出来事を描きながら、最後には、「ああ、よかった」と心からほっとして、しあわせに満たされる作品ばかりです。子どもの心の奥深くまで届くエインズワースさんの物語の世界をひもといてみてはいかがでしょう。

ルース・エインズワースさんの作品はこちらからご覧ください。

2018.10.16

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

記事の中で紹介した本

関連記事