お母さんも妹も大好き……。お姉ちゃんの複雑な気持ちと心の成長が描かれた絵童話『トラベッド』
『トラベッド』
わたしもだっこして……。きょうだいが生まれると、お兄ちゃんやお姉ちゃんは、両親を赤ちゃんに取られたような気持ちがしてしまうのは、仕方がないことなのかもしれませんよね。でも、そんなお姉ちゃんだって、赤ちゃんがピンチの時は知恵をしぼってがんばるのです！
『トラベッド』に登場する主人公の女の子・ヒロ。妹のアイちゃんは、１歳になったばかりの赤ちゃんです。おかあさんは、アイちゃんにかかりっきりで、ヒロのことをかまってくれません。「わたしもだっこして」と言いたい気持ちをぐっとがまんしています。お父さんだってお風呂ではアイちゃんのことをずっとだっこしています。ヒロはやっぱりここでもがまんです。
学校で友だちとけんかをしたある日、お母さんに一番に報告しようとしたヒロ。でも「ちょっとまってね」とアイちゃんにおっぱいをあげているお母さんを見て腹がたったヒロは「こわいトラだぞ おひげぴんぴんの らんぼうトラだぞ アイちゃんなんて、たべられちゃえっ」と、アイちゃんのベッドにトラの絵を描いてしまいました。するとその晩、アイちゃんの寝ている部屋から「ウォーッ」といううなり声が！ トラになってしまったアイちゃんのベッドが、アイちゃんを食べようとしているではありませんか！ ヒロは「だめだめだめーっ。」と必死で止めようとします。そして、ふと、お母さんのおまじないを思い出し……。
お母さんを取られたと思いながらも、毎日妹を見守っているヒロ。複雑な気持ちを脇において、トラから妹を守ろうとするけなげな様子から、お姉ちゃんとしての成長を感じられることでしょう。１日の終わりにベッドに入ってお姉ちゃんの話を聞こうとするも、つい、昼間の疲れでうとうとしてしまうお母さんの様子など、子育て中の方にもきっと共感できるところの多い作品ではないかと思います。ぜひ、お姉ちゃんやお兄ちゃんを膝の上に乗せて『トラベッド』を読んであげてくださいね。
「日々の絵本」月曜担当・H
入社14年目。舞台鑑賞が好きです。子連れで楽しめる作品を中心に月２～３本鑑賞しています。
2018.06.04
