北欧ファン必見! フィンランド発の映画「オンネリとアンネリのおうち」トークイベント vol.2
フィンランド児童文学『オンネリとアンネリのおうち』の映画が6月9日から公開されます。2月に開催された北欧の映画祭「ノーザンライツフェスティバル」で行われたトークイベントのご報告します。フィンランド文学翻訳家・末延弘子さんがフィンランドについてたっぷり語ってくれました。vol.2は、映画「オンネリとアンネリのおうち、フィンランド語についてです。
映画『オンネリとアンネリのおうち』に登場するフィンランドの生活
ーふたりがバラの木夫人の家で飲んでいるピンクの飲み物について
各家庭で手作りしているベリーのジュースのことですね。フィンランドに滞在中、毎週末、フィンランド人のおばあちゃんの家に遊びに行っていました。私がそこに泊まって、おばあちゃんは私にフィンランドの料理を教えてくれました。その1つがベリーのジュースです。庭に実ったフサスグリを摘んで、ジュースを抽出し、水で薄めて飲みました。おばあちゃんは摘み終えたベリーを冷凍し、ジュースは自宅の地下に何本も貯蔵していました。夏は冷やして、冬は温めて。私が風邪を引いたときは「ベリーはビタミンの宝庫で、これを飲めばすぐに治るわよ」とおばあちゃんがアパートまで持ってきてくれました。
ーウメ・ボーシュさんのお店で売っているブタの貯金箱
ブタは幸運のシンボルの一つです。飼っているブタが多いほど、家はお金持ちだと聞きます。富の象徴であるブタが貯金箱になっているのもこれに由来していると思います。ブタはほかに、ジンジャークッキーやミートパイの型にもなっています。
ーオンネリとアンネリが食べているオープンサンド
ふたりが食べているオープンサンドの「きゅうりのような大きなもの」はきゅうりです! きゅうりでもズッキーニのように大きいです。フィンランドでは、朝にオープンサンドを食べます。これは手の平サイズの四角いトーストや、スライスした丸い全粒粉パンにバターやマーガリンを塗って、薄くスライスしたきゅうりやトマトやチーズやハムを載せたものです。うまい具合に、どれも均一な大きさで、とてもおいしかったのを覚えています。
フィンランド語について ー日本語にないフィンランド語の表現ー
フィンランド語は、ロシアを南北に縦断し、ヨーロッパとアジアを分かつウラル山脈で生まれたウラル語です。フィンランド語をのぞく北欧諸語(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランド)はインド・ヨーロッパ語です。フィンランド語は母音が豊かで、文法的な性がなく、彼も彼女も同じ一つの代名詞です。日本語の、から・より・で・が、といった意味関係や動向を表す格助詞にあたる格語尾があり、単語そのものが変わります。これを格変化と言います。その変化は、まるで毛虫から蝶になるような飛躍があります。でも、その蝶は一匹で飛ぶのではなく、蝶を取り巻く環境とともに飛び立ちます。つまり、蝶が何かの格に変化すると、蝶を修飾していた「白い」や「美しい」といった形容詞も同じ格になるということです。単語の末尾が揃うので、韻を踏んだような詩的な響きがあり、美しくて好きです。きちんと変化して、なお美しい。フィンランド語はとても詩的で数学的な言語だと私は思います。もっとも美しいと思うのは、一つの単語に他の単語も足並みを揃えて同じ形になる、という思いやりが感じられるところです。
フィンランドの文化に深く根ざしていて、日本にはない文化や習慣などは、日本語にしづらいです。たとえばサウナに関する単語などがそうです。Löyly(ロウリュ)という言葉がありますが、これは熱したサウナストーンに水をかけたときに生じる蒸気のことをいいます。
ー映画にも登場してすぐに使えるフィンランド語
トークイベントの最後には映画でオンネリとアンネリが使ったフィンランド語が紹介されました。それは“Ihanaa.”(イハナー)。“Ihanaa.” 「かわいい! 素敵!」とオンネリとアンネリが感嘆する、フィンランドならではのインテリアや、庭など、見どころ満載の映画をぜひごらんくださいね。
2018.06.08