『絵で読む 子どもと祭り』ができるまで|第1回 長浜曳山祭(滋賀県長浜市)
「たくさんのふしぎ」400号は、絵本作家の西村繁男さんが描く『絵で読む 子どもと祭り』。こちらの連載では、4年間かけて西村さんと全国9ヶ所の祭りを取材した担当編集者が、数千枚のなかから選りすぐった写真とともに、絵本の裏側を紹介します。 第1回は、滋賀県長浜市で行われている「長浜曳山祭」です。
第1回 長浜曳山祭(滋賀県長浜市)
「長浜曳山祭」は、2016年4月に取材しました。この祭りは豊臣秀吉の時代からつづくとされているとても古い祭りです。一番の見所は、子どもたちが演じる本格的な歌舞伎です。
長浜曳山祭で、歌舞伎をする曳山(山車)は全部で12基ありますが、毎年4基ずつが交代で歌舞伎を上演します。私たちが取材をさせて頂いたのは、「翁山」(伊部町組)の皆さんでした。
写真は、本文にも描かれている、町から長浜八幡宮へむかう「登り山」のときのものです。
街中を移動するときに、綱を引いていたのは、市民ボランティアの皆さんでした。倉庫から出すとき、私たちもすこしだけ曳かせて頂きました。車輪がついているとはいえ、かなりの重量。この山車が建造されたのは、1765年。時間の重みも感じます。それをこの人数で曳くのは、案外大変なのではと思ったり……。いっぽう、歌舞伎をするときは本物の役者のような真剣な表情を見せる子どもたちも、このときはリラックスして、笑顔を見せていました。
本文には描くことができませんでしたが、登り山の時につかう翁山の「見送幕」(曳山の後ろにかける幕)は、なんと1500年代後半にベルギーのブリュッセルの工房で織られたものだそうです。翁山には1800年代はじめごろから、見送幕としてかけられるようになりました。
祭りの目玉「子ども歌舞伎」は、上演時間が40分ほどあり、街の各所で10回以上おこなわれます。歌舞伎のどの場面を、街のどこでしているところを絵本に描くか、西村さんは悩みながら取材をされていました。祭りの4日間、すべての公演を取材し、選んだ歌舞伎の場面はこちらでした。子どもたちの迫真の演技、絵からも伝ってきませんか?
この祭りでは、最高の演技ができるように、大人が子ども役者を全面的にサポートしていました。祭りの前には、「裸参り」といって、サラシ姿の大人たちが、神社にお参りして、水ごりをし、祭りの成功や子ども役者の健康を祈願します。4月とはいえ、夜になると厚手のジャケットがいるほどの冷え込みのなか、裸参りをする皆さんの熱気からは、祭りにかける思いがみなぎっていました。
2018.06.07
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